9月7日(火)

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 ピアノ室の温度と湿度管理には細心の注意を払っているつもりだが、ピッチの低下が止まらない。今は2台ともA=438になっている。低音部と高音部は比較的下がりにくいので、438にそろえて調律してある。秋の高気圧におおわれる頃には440に戻るのではないかと楽観視しているが、下げてしまった低音弦と高音弦を元に戻すのが面倒だ。
 今日は芸大に保管されてあった19世紀チッカリング社製のスクエアピアノの修復報告書を、ピアノ技術者の中山さんに見せていただいた。修復を担当したのは栃木県にレストア工房を持つ小野哲さんという方。
 スクエアピアノの保存状態が非常に悪く、4本の脚のうち3本がなくなっており、大屋根も失われ、弦はほぼ全て断弦しており、鍵盤も3本がない状態。ハンマーを全て再製作し、透かし彫りの譜面台もみな新たに作るという大仕事だった。完成したピアノは、まさに芸術品のような美しさで、小野さんの木工技術の高さをうかがわせるものだった。しかし、音を聴くことはできず、そのピアノが真の意味で復元されたのかどうかを知ることはできなかった。誰がなんと言おうと楽器は音が全て。一度聴いてみたいものだ。
 
 相対論マニアのアキヒロ君が作ったピアノのペーパークラフトの画像が送られてきたので、勝手にアップ。鉄骨フレームと弦が特に凄い。

 3βの作業が一段落したので「子ども2α」用のAppendix(おまけ、補遺)となる練習曲を書いている。単純な指練習ばかりだが、それとて弾きたくて弾きたくてうずうずするようなものでなければ役には立たない。「練習になるから弾きなさい」というのは、レスナーの怠慢にすぎない。練習してこなければ生徒のせいだからだ。すぐれたレスナーは、弾きたくなるようなレッスンをするか、あるいはそのような曲を選ぶ。ミクロコスモスのAppendixは本編よりも面白いくらいだ。