3月28日(日)

57244

 今日は新宿区の角筈区民ホールで「きたい音楽教室」の第5回発表会。作曲工房のピアノレスナーの皆さんと待ち合わせて一緒にランチ。私のようなおじさんが女性に囲まれてランチとは、なんとよい仕事に就いたことか。
 北井佳恵先生は毎年ぐんぐん力をつけており、今日も、そのレッスンの成果を存分に聴かせて頂いた。生徒の皆さんのステージマナーは抜群。トップバッターの年中さんの男の子のお辞儀はDVDに焼いて配りたいくらい。真のステージマナーは教えたくらいでは理解できない。ピアノ教室での先生の姿勢がそのまま表れるといっても過言ではないだろう。子どもたちはいつもやっていることしかできないものだ。
 ピアノへの着座姿勢も、その教室のレッスンの様子がそのまま出てしまうので興味深いものだが、今日のステージでは、小さな子どもでも自分でトムソン椅子の座面高を調節して、自然で適正な姿勢をとる。
 しかし、このあたりまでは作曲工房関連のレスナーの皆さんの発表会では珍しいことではない。
 ここから先が北井先生ご自身の力。
 かなりの数の連弾曲が登場したが、その中のかなりの楽譜が北井先生自身による編曲。生徒同士の連弾でも、年上の子がリーダーシップを発揮して小さい子をリードする。ステージ上で先生に頼るようなことがないのは、見ていて気持ちがよいと同時に感心しきり。
 「子どもにできることは子どもにさせる」という基本に忠実な証拠。
 最後に子どもたちのアンサンブルがあったのだが、それを最初に始めたのは先生だった。しかし、今回は生徒たちが「どうしてもやりたい」というので「北井さんが協力した」と聞いた。20人くらいの子どもたちが、さっさとステージに整列し、聴衆を待たせない。指揮者の生徒もすぐにスタンバイして、先生はステージの袖で見ている。楽譜はもちろん北井先生によるもの。
 元へ戻って肝心のプログラム。レパートリーの開拓にも意欲的で、手あかだらけのようなレパートリーがほとんどない。ピアノの発表会に足しげく通えば分かるのだが、不勉強な先生は数年で、場合によっては1回の発表会でレバートリーを使い尽くしてしまって、あとはローテーションで使い回しとなったりする。これでは、毎年聴きに行く意欲は失せてしまう。
 そして、生徒の技術水準に照らし合わせて妥当な曲を割り当てることも意外と難しい。無理な曲をモタモタと聴かせられるのも、易しい曲をつまらなそうに聴かされるのも辛いものだ。その点、生徒のレベルに合う曲をこれだけ割りふることができるというだけで、レパートリー開拓の不断の努力の証左だろう。
 プログラムは3部構成で、その第2部の終わりにはショパンエチュード作品10から第1番、第10番。そしてモーツァルトの「幻想曲ニ短調」が登場したが、これら難曲も本当に無理なく弾いていて、私たち聴衆が充分に楽しめるものだった。
 最後の北井さんのあいさつも感動的(本当にお世辞抜きで)。内容は聞いた人だけの思い出ということにしたいが、発表会の最後のあいさつがこれほど重要だったのかとあらためて知る機会となった。生徒たちも“北井先生”に絶大な信頼をよせている様子がよく分かった。
 北井さん、本当にお疲れさまでした。来年は、これをお読みの皆さんにも是非聴いて頂きたいと願っています。