9月11日(土)いきなり夏バテ

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 朝、目覚めて体調の悪さに気づいた。風邪かと思ったけれど、その後、夏バテではないかと思い至った。「いきなり夏バテ」。
 今日は、レッスンに通う4人の子どもたちが出演するコンサートがあるのに行けそうもなかった。結局、一日ゆっくりと休み、明日のコンサートには行けそうな感じではある。

 明日はいよいよ「フルートとピアノのためのソナタ(2007)」の再演がある。初演者とは異なる演奏者なので、この曲の違う表情を聴くことができることだろう。
 ここで、予習を兼ねてフルートソナタの解説を少しだけ。
 最初に楽譜に記した献辞の紹介。

 献 辞
 この曲は2001年に構想がまとまり作曲を始めましたが、それはちょうど私自身の音楽的な進歩と変容の時期と重なっていました。そのため、作曲と改訂が繰り返され、第2楽章に至っては3回も完成(未完の完成)させなければなりませんでした。その後、ようやく私自身が音楽的な居場所にたどり着き、これを決定稿とすることができました。
 第3楽章だけは2005年7月に単独初演(演奏者は同じ)されましたが、全曲初演は2007年7月21日(土)に新宿区四谷の東長寺内の “きあん” でフルート・中島 恵さん、ピアノ・尾崎知子さんによって行われました。
 今まで、もっとも多くの曲を委嘱してくださった中島 恵さんと、私の音楽の深い理解者のお一人である尾崎知子さんに、感謝とともにこの曲を捧げます。

 2007年11月18日 野村茎一

 2001年に中島 恵さんの委嘱によって5曲からなる「バスフルートとユーフォニアム、ピアノのための組曲」を書き上げた。

I. 夜の幸いならんために
II. 王の墓碑銘
III. 月の滴
IV. 水の上にて歌える
V. 彼女は吠え、私たちは戯れる

 この曲は、今まで書いたどの曲とも違っていた。今でも大好きな曲のひとつだ。この曲で得た新しい境地を確実に自らのものにするために選んだのが「フルートとピアノのためのソナタ」だった。私はモーツァルト型ではないので、まず、徹底的にスケッチをとる。ところがスケッチをとっていくうちに、わずか数日前に書いたスケッチが安っぽく感じてしまうほど進歩(?)してしまうようなことがたびたび起こった。そのため、いい曲だと思って書いても、すこしたつと没になってしまう状況が続いた。それはウラノメトリアにも起こった。だから2003年から2005年頃に完成した曲は多くない。
 ちょうどその頃、別の演奏家の方からの委嘱で「4手のためのピアノソナタ」の作曲も進めていた。こちらも書けば書くほど音の選択が精密になっていって、完成は困難を極めた。
 私は誰より先駆けて新しい音楽を書こう(前衛的姿勢)とか、逆に分かりやすい曲(既成の概念で聴ける)を書こうなどとは考えていない。自分自身が納得する音楽を書きたいのだ。ベートーヴェンが「月光ソナタ」を書いた時、他人からの評判、つまり「この曲はウケるだろうか?」などとは考えなかったに違いない。彼は、おそらく自分の思いどおりの曲が書けたことに満足したことだろう。それが同時代人はおろか、未来人(つまり我々)までが共感する本物の音楽であったということだ。
 精密に音選びをしたピアノソナタは2004年に完成し、私も大きく成長した。そして、ようやく音楽的スタンスが安定した私は、2005年にフルートソナタ第3楽章、2007年には第2、第3楽章を完成させることができた。
 非常に苦しい思いをしたのだが、今になって思い返すと何と楽しい時間であったことかと感じてしまうことが不思議だ。
 自称第2楽章マニアなので、どちらのソナタの第2楽章とも入れ込んだ。その結果、音選びは今までになく精密になり徹底的に圧縮されて、一音たりとも欠かすことができないほど短くなった。とくにフルートソナタの第2楽章は、当初の計画の半分以下の長さに収まった。

 第1楽章は古典的なソナタ形式。無調ではないが長調なのか短調なのか判然としない2つの主題で構成されている。不安と期待が交錯する展開部を挟んで平和で冷静な結尾を迎えて曲を閉じる。
 第2楽章はただの音階に不思議な和声づけがなされただけの主部がカデンツァ風の中間部を挟む3部形式の小品。結尾を迎えることなく第3楽章へとつながる。
 第3楽章は明るい雰囲気の第1主題と歌うような第2主題による、展開部を欠くソナタ形式。展開部を欠くとは言っても再現部に展開が持ち込まれており、変則的なソナタ形式と言うべきだろう。

 メンバー登録(無料)が必要だが、下記サイトで「フルートとピアノのためのソナタ」と「4手のためのピアノソナタ」全曲を試聴できる。ただし、ソフトウェアによる単純再生なので演奏そのものはよいものではない。

Nomura Keiichi (野村茎一)- composer


武蔵野音楽大学同窓会第20回記念演奏会

2010年9月12日(日)午後1時開演
川口リリア音楽ホール(JR京浜東北線川口駅西口駅前;赤羽駅から一駅)
全席自由1500円。

フルートソナタは午後3時前後になる予定。演奏者はフルート・前田有文子さん、ピアノ・坂本景子さん。