1月2日(日)ホキ美術館

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 今朝は早起きして(7時50分だから全然早くない)、三枝君のクルマで、カミさん、風と「ホキ美術館」へ。
 「ホキ美術館」は「ホギメディカル」の創業者である保木将夫氏がコレクションしてきた絵画に、新たに画家たちへ委嘱した新作を加えて開館した美術館。所在地は千葉市緑区で最寄り駅は外房線土気(とけ)駅。
 少なからぬ個人美術館が歴史的に評価の高い画家たちの作品の蒐集に努めるのに対して、この美術館は保木氏の審美眼によって集められた写実絵画だけを収蔵している。
 レベルの高い個人コレクションの例としては、同じく千葉県の「川村記念美術館」が挙げられるだろう。レンブラント、モネ、ピカソシャガールルノアールマティス長谷川等伯尾形光琳横山大観橋本関雪など錚々たる名画が並ぶ。マーク・ロスコの評価が定まっているかどうかは議論の分かれるところだろうが、それでも「ロスコルーム」は圧巻だ。
 もう少しパブリックなところでは石橋財団による、名画揃いの2つの美術館もあるが、いずれも歴史的に価値の定まった名画に焦点を当てている。
 しかし、保木氏は自らの審美眼を来館者に問うているような印象だった。野田弘志を始めとするリアルな絵画を追究する画家たちは一部のファンから根強い支持を受けている。しかし、未だに美術史上の位置は定まっていないというところだろう。しかし、保木氏の中ではきっちりと定まっている。美術館の展示はそれを強く主張していた。そのような姿勢(自らの判断を明示する姿勢)は称賛されてしかるべきだろう。
 いろいろな絵を並べた幕の内弁当のような美術館ばかりが林立するほうが、むしろ奇妙ではないか(実際には日本の多くの個人・公共美術館が個性的であり、それぞれの美をたたえている)。
 美術品は一点ものなので、ひとつの美術館だけで美術史上の名作を概観することは難しい。その点に着目したのが鳴門市にある大塚国際美術館だろう。ここでは最初から陶板画による実物大の複製を展示することによって、美術史上の名画を一挙に鑑賞できるようにした点で他の美術館を一線を画している。
 私たち美術ファンが画集を買い集めても、多くの場合実物大ではない。つまり、実物大で鑑賞することは難しいことなのだ。だからといって世界中の美術館を回ることも難しい。それを広大な美術館ひとつで実現してしまった。この試みも高く評価されてよいと思う。
 ホキ美術館は、大塚国際美術館の対極をなす美術館と言えるだろう。
 写実絵画を初めて見た人の多くは写真のようだと思うかも知れない。しかし、見慣れてくればそれが画家の手による絵画であることが分かってくることだろう。ホキ美術館には多分収蔵されていないと思うが、アメリカのリチャード・エステスのような、まさに写真のように描く画家の作品でさえ、それを見慣れた人には絵画としてしか見えないはずだ。写真を元に描く絵画もあるが、それでも写真と絵画は異なる。どちらが上であるかは写真家と画家の資質に関わる問題であって、表現媒体の問題ではない。
 写実絵画にも芸術的な傾向の作品と通俗的な傾向の作品があり、結局は干渉する側が鑑賞眼を育てて、それぞれ評価していくしかない。ホキ美術館は、それを問いかけてくる貴重な機会を与えてくれることだろう。