11月6日(木)管弦楽法

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 今、レッスンでオーケストレーションの勉強をしている方が2人。
 オーケストレーションは作曲の勉強の頂点に位置するものだろう。オーケストレーションにおいて最も重要なことは「クリアリティ」である。その実現のために作曲者が操作できる主な項目は「楽器編成」「音色」「音量」「和声配置」「対位法」の5要素だろう。このほかに「奏者の配置」などのようなものも指定できる。
 オーケストラというと、編成がだいたい決まっているような気がするけれど、モーツァルトでさえ、1曲ごとに使われる管楽器が少しずつ異なっているし、ベートーヴェンになると楽器編成を見ただけで、その曲の性格が分かる。音色は、楽器と奏法。楽器の選択のほかに「楽器のブレンド」も重要だ。モーツァルトは弦にフルートをブレンドして使ったり、ストラヴィンスキーはフレンチ・ホルンのロングトーンのアタックにチェロのピチカートをブレンドしたりする。弱音器や金管楽器の特集ミュートなどを加えると、その組み合わせは、ほぼ無限にあって管弦楽法のテキストにもとても書ききれない。素晴らしい音色の創出には、ある意味、特殊な才能が必要かも知れない。ここでいう音量はデュナーミクのことではない。ストラヴィンスキーの「春の祭典」は5管編成による大きなスコアだが、tutti の時に大きな段数を占める木管楽器があまり目立たないのにホルンがくっきりと浮かび上がったり、あるいは tam-tam(銅鑼・large gong)が全ての音をかき消してしまったりする。つまり、作曲者が聴こえて欲しいと思う音が、充分その役目を果たすだけの配慮が為されなければならないということだ。「和声配置」は、倍音律を考慮した和声配置や、あるいは重要なメロディーとバッティングしないような和声配置を心がけることで、これができていないとクリアリティが損なわれる。対位法は重要。ドミソのような基本の和音は音が3つしかないのに、オーケストラには何十人もの奏者がいる。ドミソの各音を20人ずつに割り振るなどというようなことは、そうやたらあるわけではない。
 一生に1曲くらい、大規模なオーケストラを存分に鳴らしてみたいと思う人は少なくないだろう。