3月2日(月)

18563

 午前中は、父をかかりつけの医者にクルマで送る。父は土曜日に映画「おくりびと」を観てきた。家族の誰もが90歳を過ぎた老人が一人で外出してしまうことに気が気ではないが、認知症の兆候は全くないし、行動しようという意欲は孫たちを除けば一番であることは間違いない。
 主演の本木雅弘のチェロが素晴らしかったそうだ。

「君もチェロ弾きだろう?」

 確かに学生オケではチェロを弾いていたが、もう昔の話だ。
 最も美しいのは声だと思うが、楽器として最も完成度が高いのは弦楽器、それもヴァイオリンであることは間違いないだろう。その奇跡的な形と構造が人生を賭けるに充分な音と表現力を実現した。個性的という点では管楽器に、あるいは自己完結という点ではオルガンやピアノなどの鍵盤楽器に勝るものはないが、表現力(音楽的解像力)ではヴァイオリンの凄さに及ぶべくもない。今後、天才的な作曲家が現れてマリンバの隠れていた表現力を衆目の前にあらわにすることもないとは言えないが、ヴァイオリンを超えることはかなり難しいだろう。
 最近、ヴァイオリンソナタを秘かに計画している。今までにソプラノサクソフォーン(1996)、アアルトサクソフォーン(2000)、オーボエ(1999)、フルート(2007)のためのソナタを書いてきた(習作期には、管弦楽法を習得するためもあって、さらにいろいろな楽器のためのソナタを書いている)。それぞれの楽器の、まだ誰も知らないような特性・個性を発掘して、さらに表現領域を拡張できたらなどという野望に燃えながら書くのだが、まだまだ理想には近づけない。それにしてもヴァイオリンは桁外れだ。ピアノソナタもなかなか手が出せない。