8月5日(水)

31365

 まだ20代の時に聞いた登山家の田部井淳子さんの講演は強烈だった。彼女自身は控えめな人で、大げさなことなど何も言わなかったけれど、一言一言が印象的だった。
 今夜、そんな田部井さんがラジオ番組に出演なさったので聞かせて頂いた。
 今夜は彼女がどのように結婚を決意したかをインタビューされていた。

「もしもの時に、この人なら見苦しくなく後片づけ(少し言葉が違うかも)してくれるんじゃないか、と思ったからです」

 これを解説すると、登山はいつ死ぬか分からないからその覚悟で登っている。しかし、山で死んだ人が適切な処理がなされずに惨めな、あるいは尊厳をもなくすような姿をさらす場面にも出会ってきた。子どもたちには母親のそのような姿を見せたくない。この人(現在の夫)ならば、そのような心得があるのではないかと思った、ということである。
 20代の、今よりもさらに愚か者であった私が当時感じたのも彼女の志と覚悟だった。いまだに志と覚悟の壁はとてつもなく険しく、遠いところにある。