10月3日(土)

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 今日は午後から、小学生の時から機会あるごとに聴いてきた北村朋幹(きたむら・ともき)君(もはや“くん”ではない)が高校3年生となってのベートーヴェンのコンチェルト第4番。指揮は尾高忠明さん、オケは東フィル。会場は文京シビック。チケットの手配はおちゃめさん。ホールは満員とはいかなかったものの8割がたの入り。このご時世に大したものだ。
 彼のピアノはいつもながら透明で繊細で美しい。4番をガンガンと弾き進んだところで音楽は浮かび上がらない。今日は第1楽章の冒頭を少し過ぎたあたりにオケに乱れ(木管と弦のリズムの不一致)があったものの、それが尾を曳くことはなく、すぐ秩序が戻ってベートーヴェンが意図したであろう音楽が流れ始めた。この曲はベートーヴェンの他の4曲のピアノ協奏曲(5曲目に番号外のニ長調を入れても)の中でもとりわけ孤高の協奏曲で、CDを含めて、なかなか名演奏に巡り合えない。この成熟した演奏が高校3年生かと思うと、将来の大きさ・深さが想像できない。荘重(そうちょう)な第2楽章も軽快な第2楽章も実に贅沢な時間だった。アンコールは「エコセーズ 変ホ長調」。こちらは普通の出来栄え。
 休憩後はベートーヴェンの7番。ホールの入り口で渡されたコンサートのチラシの束にも「ベト7」のコンサートが2ケタに達しようかというくらいあった。まさに“のだめ”効果なのだろうが、さすがに食傷気味。繰り返しの多い曲なので、余計長く感じてしまう。
 演奏後、尾高氏が「ベト7の後でアンコールを要求するのは日本人だけだとサヴァリッシュ先生が言っていました」と話し、客席の笑いをとって終演。
 帰宅する頃には空の雲がとれて、中秋の名月が明るく輝いていた。