12月5日(土)ハイドン オラトリオ「四季」

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 今朝のできごと。
カミさん「1階のお母さんが、急に今日の演奏会に行けなくなった人からチケットもらえるそうなんだけど、行ける?」
私「明け方まで楽譜書いてたから気持ち悪くて行けないよ〜・・・(ちなみに、まだベッドの中にいて寝ぼけている)。何のえんほうかい(演奏会)?」
カミさん「芸術劇場で午後だって。いま調べてるから・・」
私「ほえ〜・・・(寝ぼけている)」
カミさん「え〜とね。エマニュエル・パユ、ポール・メイエ、エリック・ル・サージュ・・・」
私「い、行く! ナニガ何デモイク!」
カミさん「あ、間違えちゃった。これはさいたま芸術劇場だった」
私「な〜んだ、喜ばせるなよ〜。ところでパユのコンサート、当日券ないの〜?」
カミさん「完売だって」
私「当然だよな〜・・・」
カミさん「えっと・・・、東京芸術劇場はね、ハイドンのオラトリオ “四季” だって」
私「ブー!(鼻血が出そうになった音)あわわわわ、行く!(完全に目が覚めた)」
 
 なんという幸運だろう。すぐに今日のレッスン予定を組み直して時間や曜日変更を連絡して午後の3時間半を空けてもらった。皆さん、ご迷惑をおかけしました。ご協力感謝いたします。
 午前中のレッスンは“ひかり”ちゃんと“あかね”ちゃん。どちらも小6(しかし、体格は中学生くらい)だが、まるで違うタイプ。“ひかり”ちゃんは言葉や物腰が美しく、こちらが衿を正したくなるようなお嬢さん。
 いきなりだが、シンデレラにはいくつか妙なところがある。その中のひとつが、魔法使いに身なりを整えてもらえたとしても王宮の舞踏会に堂々と出かけていくには立ち居振る舞いと会話に自信がなければ物おじしてしまうのではないかということだ。つまり、突然皇居の晩餐会に招待されたと考えれば分かりやすいだろう。
 “ひかり”ちゃんは、平然と(もちろん緊張するだろうが)、それらをクリアして帰ってくるのではないかと思わせるところがある。
 彼女には、以前 “ハレ” と “ケ” の場について説明したことがある。それをすぐに理解して面白がってくれた。今日は、さらに一歩進めて、どのような場においても自分の役割を果たせる(でしゃばることも物おじすることもない)人こそが優れた人の行動と言えるのではないかと話すと「とても勉強になります」(すでに小学生っぽくない)という言葉が返ってきた。
 入れ違いに “あかね” ちゃんがやってきた。
「せんせい。今日はね、この曲から」
 彼女が開いたのは意外にもウラノメトリア2アルファの「フランス人形の演説」。
 中間部のコントラストに入るまえのところで「あかね、ここどうすればいいかわからない(ちょっとブーたれる)」。
リタルダンドしてペダルを離したら?」
「あ、そっか!」
 しかし話は早い。後はコーダのソットヴォーチェを例奏してクオリアを伝えれば私の役目はおしまい。
 あっという間に見事な演奏になって合格。
「次はねえ、“おじいさんの話”。これ、へんな曲〜」
「でも、アクセントの位置とアーティキュレーションを守ればフツーに聴こえるはずだよ」
 毎小節のように拍子が変わる冒頭部分のアクセントとアーティキュレーションを一緒に練習すると、これもすぐに解決。終わりの複調部分は片手ずつ連弾したら“変”ではなくなった。
 ソナチネアルバム第1巻1番全楽章。
「1楽章は展開部から弾くからね」
 提示部は彼女の中では合格しているらしい。
 ソナチネを弾き終えると、ウラノメトリア3ガンマを見つけて「あ〜!新しいウラノメトリアだ〜! せんせい、弾こう弾こう」
 それから2人で片っ端から弾いていく。処女航海では「すごいすごい!」、1楽章のソナチネでは「すごいすごいすごい!」。
「こんなに喜んでもらえるなんて、せんせいは嬉しいよ」
「今日、あかね持って帰るから」
「ありがとう。特別にシリアルナンバー入りのを渡すよ」
「なにそれ?」
「将来、いいことがあるかも」
「ふ〜ん」
 来週、彼女は何を弾いてくるのだろうか。

 そして午後、カミさんと2人池袋の東京芸術劇場へ。
 ユニフィル(ユニバーサル・フィルハーモニー管弦楽団)第26回定期演奏会。聞いたことのない名称。しかし、チケットは7000円だからプロのオケだろう。指揮は三石精一さん。三石さんの指揮は過去に何度も聴いている。
 芸術劇場大ホールの2階席中央ブロックの最前列左側の2席。すばらしいポジションだ。
 ステージ中央にはラインハルト・フォン・ナーゲル(パリのクラブサン製作者)が1990年に製作したと思われる(1990という数字が読める)2段鍵盤5オクターブの黒いチェンバロがある。指揮者が弾き振りするのだろう。
 まず、合唱団がステージに上がってくる。総勢200名はいるだろうか。オケは5-4-3-2-1.5プルトの弦セクションと2管編成にコントラファゴットとトランペット3、トロンボーン3、パーカッション3。
 双眼鏡を使うと、座席からコンサートミストレルの譜面台の楽譜が読み取れる。
 ソロの歌手4人と指揮の三石精一さんが現れ、演奏が始まる。演奏レベルは非常に高い。いつのころからか、日本のオーケストラのレベルはとても高くなった。逆に、FMから流れてくるヨーロッパの一流どころ以外のオケの中には芳しくない演奏をするところもある。
 合唱団のメンバーの方々の中には白髪の方も少なからずいらっしゃったが、こちらも素晴らしい。ハイドン万歳だ。
 春と夏を終えて休憩。ワインオープナーのようなチューニングハンマーを持った調律師がチェンバロの調律をする。会場はちょうどよい暖かさで、寝不足にはこたえる。秋が始まると、あまりの気持ちよさについウトウトしてしまった。気がつくと冬のクライマックス。
 演奏終了後、拍手は鳴り止まなかったがアンコールはなし。この編成では無理というものだ。
 大急ぎで帰宅して、中学生・高校生・大学生のレッスン3つをこなして、ようやくPCの前に座った。ウィキペディアで調べると、東京都内に本拠地を置くプロオケは11もあった。しかも、東京交響楽団ミューザ川崎シンフォニーホールに本拠地を移しているので含まれていない。海外の都市で11もの職業オーケストラを抱えるところはあるのだろうか。