2月24日(水)

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 午前中は父の定期通院に付き添う。待合室で小野藤子さんという料理研究家の「おうちで作る郷土ごはん」に出会った。これは良書。伝統料理の凄さはあらためて主張することもないだろう。ぬか漬けひとつとっても、料理研究家の思いつきでは到達できない。糠床の発見、あるいは糠床の雑菌が主に嫌気性菌であり、毎日糠床に空気を入れる(かき混ぜることによって)ことによって正常な発酵が継続できることなど、長い時間をかけて少しづつ蓄積されたノウハウであることが分かる。
 もう20年くらい前になるが、図書館で世界の伝統料理のレシピをしらみつぶしに調べた時期がある。そこには驚異の世界が広がっていて、私は先人達の知恵の泉で沐浴することができた。伝統料理の多くは生命科学としての栄養学と整合姓がある。それは、その食文化を持つに至った民族が生き長らえていることからも分かる。伝統料理に到達できなかった民族は滅びてしまったのではないかと主張する栄養学者もいた。伝統料理の持つ意味を理解しない人は、おそらく伝統音楽の価値も理解しないことだろう。
 伝統を受け継ぐことは容易くない。また、伝統を受け継ぐことは保守的になることではない。取り巻く環境が変われば、伝統もそれに適応・最適化するために姿を変えなければならないからだ。

 午後は、明日のウラノメトリア編集会議に備えて決定稿(たぶん)のプリントアウトを行なった。連弾曲集である3ガンマがたくさん売れ残っていて、まだ3アルファの印刷資金が集まっていない。3ガンマは、おそらく現在刊行されているウラノメトリアでは最も傑作が詰まっていると思うのだが、やはり需要はメソードに集中するということだろう。