11月6日(土)アンドリュー・ワイエス展

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 今日は、午前と夕方のレッスンの合間に父のお供で「丸沼芸術の森所蔵 アンドリュー・ワイエス展−オルソン・ハウス物語−」(埼玉県立近代美術館)へ行った。
 アンドリュー・ワイエスの作品に初めて出会ったのは1974年、竹橋の国立近代美術館の「ワイエス展」だった。それからワイエス展があると、足しげく通った。
 今回は、ほとんどが素描(習作)と簡単な水彩画だったが、今まででもっともワイエスを理解するのに役立つ企画だった。ワイエス(単にワイエスと書いたらアンドリューを指す)の作品が極めて個人的なものであること、そして全ての作品がワイエスの人生そのものであることが分かるような内容。
 オルソン・ハウスの模型があって、「納屋のツバメ」などの作品がどの方向、どの位置から描かれたものかが一目瞭然に分かるようになっていて、これはよい企画だった。ウラノメトリアでもタイトルをお借りした名画「海からの風」はオルソン・ハウスの3階の部屋で描かれた。その習作は、完成作に優るとも劣らぬもので、34年前に初めて見た時の感動がよみがえってきた。
 「クリスティーナの世界」の習作群も素晴らしかった。この習作群を見なければ「クリスティーナの世界」が、今日ほど理解できたとは到底思えない。オルソンハウスの最後の住人であった姉クリスティーナと弟のアルヴァロが1ヵ月の短い間に相次いで亡くなった後に描かれた「オルソンハウスの終焉」は、人生を考えさせられる、心に滲みる作品だった。

 ワイエスの創作態度は何か新しいことをやるだとか、美術界をリードしようというような野心を全く感じさせない。彼は誠実に自分の人生を写し取っていった人だ。それだけで充分だった。ワイエスの作品を見ると、ほかの画家がみなガツガツしているように感じてしまう。当然のことながら音楽も同じなのだろう。誇張もハッタリも勝負も何もない、自然な音楽を書きたくなる一日だった。