11月20日(土)内田光子&ヴィヴィアン・ハーグナー デュオ・コンサート

101650

 午後から東京オペラシティの武満メモリアルホールに「内田光子&ヴィヴィアン・ハーグナー デュオ・リサイタル」を聴きに行った。日本財団が主催するチャリティーコンサートなのでチケットが安く、私は3階R2の3000円の席(それをさらに2700円で入手)。
 ヴィヴィアン・ハーグナーというヴァイオリニストについては予備知識がなかったが、内田光子さんと協演する理由がすぐにわかるほどのプレイヤーだった。今朝の定期便に、うっかり「チェリスト」と書いてしまったのに気づいたが、今朝はジャクリーヌ・デュプレのことを考えながらキーを打っていたのだった。
 使用楽器は、日本財団が貸与しているストラディバリウスが1717年に製作した「サセルノ」というヴァイオリン。豊かに響くというよりは優美で繊細な音質という印象を受けた(座席の位置によって聴こえ方が異なるかも知れない)。
 最初の曲はモーツァルトの有名な「ヴァイオリンソナタ ホ短調 K.304」。小手調べと思って聴いていたのだが、演奏のあまりの素晴らしさに第2楽章では泣きそうになってしまった。聴きながらベートーヴェンの「ピアノソナタ第5番ハ短調 第3楽章」やショパンの「スケルツォ第2番」のフレーズが浮かんだ。彼らも「やられて」しまったのかも知れない。
 続く2曲は無伴奏
 バルトークの「無伴奏ヴァイオリンソナタSz117」から「シャコンヌのテンポで」とバッハの「無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番」から「シャコンヌ」。2曲とも重温奏法を多用したポリフォニー。妙な言い方になるが、少しも似ていないがそっくり。ただでさえ緊張度の高い曲をさらに張りつめた表現で演奏し、ホール中が凍りついたような印象だった。
 バッハの「シャコンヌ」は、ブゾーニによるピアノ版よりもオリジナルのほうがずっとよいと感じさせる演奏だった。これは今まで聴いてきたほかのヴァイオリニストの演奏とはの逆の印象。今日まで、ピアノ版のほうがカッコいいと思って聴いてきた。
 休憩なしで最後のプログラムに一気に進む。今日は、この1曲だけを聴くつもりできたブラームスの第1番。ブラームスは私にとって、どちらかと言うと縁遠い作曲家だが、この1曲は別。至福の時を過ごした。
 内田光子さんのピアノは、ヴァイオリンがピアニッシモの時でも見事にバランスをとって音をかき消すことがなかった。つまり、2人の全ての音が聴こえる演奏だった。
 アンコールはベートーヴェンの「春」の第3楽章。
 繰り返されるカーテンコール(?)を含めてぴったり1時間30分。コンサートとしてはこれが演奏家も聴衆も集中力から考えて適度な長さだろう。
 
 今日演奏された曲を書いた4人の作曲家に共通するのは、演奏家を本気にさせるという点だ。本当に優れた曲は聴衆ではなく、演奏家のために書かれるのかも知れない。

 
武満メモリアルホールのホワイエにあったクリスマス・ツリー