3月11日(土)東北太平洋沖地震

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 午前中に保険コンサルタントの方に来宅していただき、レッスン保険の更新。
 作曲工房は遠地からのレッスンの方が多いので、レッスンに通われる全ての皆さんのために傷害保険に加入している。保険料はそれほど高くないので、私が負担している。まさに安心のためのお守りのようなもの。
 
 そして午後2時半ころ、モリアキ翁は運動を兼ねて近所の郵便局へ。
 その少しあと、緩やかな揺れが始まった。徐々に揺れが大きくなってきたのでリビングに向かうと、地震時に退避することになっている場所で “たろ” がきゃあきゃあ怖がっていた。床に座っていっしょに揺れに耐えていると、ほどなく大きな揺れがきた。
 ガタガタと大きな音を立てて建物がきしんだ。

「こんなに大きいのは初めてだね」
「きゃあ〜きゃあ〜こわいよ〜」
 
 揺れは少なくとも2分程度は続いたのではないだろうか。揺れが収まってからリビングに行くと、コーヒーカップは倒れていないのに、中のコーヒーはテーブルの上に。はっと思いついて書庫へ行くと、本棚が一部雪崩を起こしていた。とりあえず書庫の床は歩けない。

「おじいちゃん、大丈夫かな?」

 そうだ、モリアキ翁は郵便局へ到着していないだろう。すぐに上着を羽織って外へ出た。こんなにたくさんの住民がいたのかと思うほど多くの人が家の外に出て、地震の揺れについて話していた。

「あ、お爺ちゃんなら少し前にこの道を行きましたよ」
「ありがとうございます」

 モリアキ翁はご近所の人気者だ。
 近所の小学校の校庭には児童たちが避難して整列していた。揺れが収まったので、このあと再び教室に戻るように指示されていた。
 郵便局までの道筋に父はいなかったが、郵便局にもいなかった。窓口の局員さんに尋ねても今日はまだモリアキ翁は来ていないということだった。

「お見えになったら電話しましょうか?」

 そう言ってくれたのだが、携帯も電話もすでにつながりにくくなっていたので、丁重にお断りして今度は別ルートで捜索することに。
 ほどなく、余震と思われる強い揺れ。妙な転び方をして立ち上がれなくなっているのではないか、などと考えると不安になって、捜索を急ぐ。
 考えられるルートの全てを探してみたが、モリアキ翁は見つからない。一度帰宅してみたが、モリアキ翁は家に戻ってもいなかった。今度は自転車に乗って出かけた。
 するとなんのことはない。郵便局の窓口にいるモリアキ翁を発見。

「すごい揺れだったな」
「ああ、無事でよかった」
「なに言ってるんだ、あのくらいなんでもないよ」

 モリアキ翁は道路で強い揺れを感じたものの、帰宅することなく、そのままコンビニでコピーをしていたという。

 帰宅すると、モリアキ翁の書斎も書籍雪崩が起きていた。

「すごいことになったな。これは本を整理するチャンスだ」

 どこまでも前向きなモリアキ翁なのだった。
 レッスン室に行ってみると、レッスン室前のホールで画集が雪崩を起こしていてレッスン室の防音ドアが開かない状態。重い画集を片づけてドアを開けると、こちらも楽譜雪崩。ピアノも数センチ移動していて、2台のピアノの鍵盤が一列に並んでいなかった。参った。
 PCは地震を感知して自動停止。楽譜データは大丈夫だろう。
 しかし、今日の残りのレッスンは、全て日程変更しなければ。

 崩れ落ちた楽譜の量の多さに圧倒されて、何もせずにリビングのテレビで “たろ” と一緒に地震情報を観る。
 メールが通じにくいので、“たろ” はPCのツイッターで友達と安否確認をしたそうだ。友達の一人はシャンプーしている最中に揺れに教われ、ガスが自動遮断されてシャワーが水になって寒かったそうだ。それよりシャンプー中の地震は怖すぎだろう。
 カミさんからも時間差メールが着信。“風”、“海” にメールしても返信がない(長男からは2時間差で返信あり)。
 
 テレビ画面には、スマトラ沖地震と同じような「街中を押し寄せる津波」が映し出されていた。漁港では漁船が岩壁を越えて道路の中央に鎮座している。仙台空港も水びたしだ。

 しかし、何より気になったのは原子力発電所だ。
 夜になってから、福島第1原発の2号炉の冷却装置の電源が停止したというニュースがあった。おおメルトダウンへの第一歩ではないか。チャイナシンドロームを体験するのは日本が世界で最初になってしまうのだろうか。スリーマイル島でもチェルノブイリでも炉心融解だけは避けられたのに、こんなに簡単に炉心融解へのカウントダウンが始まってしまうとは。
 津波ディーゼル発電機が水をかぶってしまったことが原因ということらしい。原発は耐震性だけでは足りないのだ。津波は当然予想できることだったはずだ。
 ニュースはさらに続く。電源車が現地に向かっているが、まだ到着できない。
 ついに、原子力災害対策特別措置法に基づく「原子力緊急事態宣言」を発令し、付近の住民に避難の指示が出された。これはまずいことになった。
 地震マグニチュードは発生時の速報で7.9、その後8.4、さらに8.8に修正された。ちなみにアメリカ地質調査所はM8.9と発表している。

 明日のレッスンは宇都宮の人。交通状況によっては日程変更となるかも。