5月8日(日)

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 今朝のNHK教育日曜美術館」は野田弘志さん。
 野田さんの北海道のアトリエからの風景が以前見た夢に出てきた「たぶん未来の自宅」からの眺めと似ていてびっくりした。その夢では、老境を迎えた私が白っぽい家に一人で暮らしていて、キッチン(ダイニングか?)の窓の外は大自然だった。
 話題を戻す。野田さんは精密・精緻な絵を描く人なので、制作には非常に時間がかかる。その感じがとてもよくわかる。音楽で曲を精密に書くと言った場合2つの意味があると思う。ひとつは複雑な技巧を凝らして書いていくことで、もう一つは自分自身の持っている音のイメージに限りなく忠実(まさに写実的)であろうとする態度だ。私は後者。
 メロディーを追いかけて曲を書くと、絵でいえば“輪郭線”で描いた分かりやすいものになる。しかし、音楽的なイメージはそんなに単純なものだろうか。もちろんメロディーは重要だけれど、一本のメロディーを和声で支えるだけの音楽はラフスケッチのようだ。
 野田さんの絵を評する人として作家の宮尾登美子さん、詩人の高橋睦郎さん、画家の大沼映夫さんが映像で出演。若い頃に好んで読んだ詩人の高橋睦郎さんの声と言葉を初めて聞いた。
 彼は、「レオナルドやフェルメールの絵が、ある種の理想化が為されているのに対し、野田弘志の絵にはそれがない」と言っていた。まさにそうなのだろう。画家の大沼映夫さんは「画家はきれいなものを描いていれば済むのだが、良い画家には毒がある。野田は骨などを好んで描くというような毒がある」と評した。
 野田さんは1日12時間も絵の制作に費やしているということだった。それだけ聞くとストイックな印象を受けるが、ひょっとしたら禁欲的どころか享楽的なのではないだろうか。私も作曲に費やす時間なら多いほうだと思うが、書いていないと気が済まないのだ。充実感があって、苦行というよりは楽しい(本当は楽しいのではないけれど、言葉が見つからない)。大変なほど楽しい。
 夜のNHKスペシャルは「浮世絵ミステリー 写楽」。これも面白かった。東洲斎写楽は誰なのか、という謎は「邪馬台国はどこか」という問題と同じくらい興味深い。写楽の謎に関する書籍は、過去に何冊か読んだ。「写楽北斎説」や「写楽歌麿説」あるいは版元の蔦屋 重三郎説などがあった。今回は、ギリシャで発見された写楽の肉筆画の線描の特徴から写楽を特定するという試み。線描の鑑定には日本画家の宮廻(みやさこ)正明さんが行なった。宮廻さんは、彼の個展でお見かけしたことがあり、とても甲高い声で話しておられたことを思い出した。野田弘志級の精密で写実的な絵を描く画家。彼は、写楽の肉筆画を詳細に見て「誰とも似ていない。つまり、写楽は存在する」と断言した。
 結果を言えば、番組では写楽能楽者の斎藤十郎兵衛であると結論している。確かに、これで写楽問題には決着がついたと感じた。

 今日はファゴットソナタ(発表時には「バスーンソナタ」となる予定)の第1楽章を9割がた書き上げた。ほぼイメージどおりに仕上がったと思う。

 産経新聞のサイトから「原子力も温暖化もない未来」へ。
 再生可能エネルギーを否定したがる知識人も少なくないが、日本は地熱エネルギーの宝庫でもある。電力ピークに適した太陽光発電と、潜在的なエネルギー量の多い風力、それに安定したエネルギー源である地熱が加われば、数十年後にはそれらが主流となることは充分ありうるだろう。

「原子力も温暖化もない未来」へ