8月19日(金)

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 今日、蟹座は運勢が悪い日だとテレビが言っていたのは本当だった。
 朝から雷鳴が轟き、PCの電源を落としてACケーブルも抜かなければならなかった。それで、ちょうどレンタルしていた映画「オーケストラ(2009)」を観た。
 映画「トランスポーター」シリーズでちょっととぼけた、しかし切れ者のベテラン刑事を演じていたフランソワ・ベルレアンが、パリのシャトレ座の劇場支配人として出演していた。ここでも適役だ。
 話はそれるがジェイソン・ステイサムが演じる「トランスポーター」シリーズの主人公はフランク・マーティン。フランス語読みでフランク・マルタンだ。観ないわけにはいかない。

 ところで、映画「オーケストラ」は実に面白かった。映画を支えていたのが、劇中で演奏される音楽の素晴らしさ。ストーリーは虚構の積み重ねで面白くできるが、音楽には事実しか通用しない。とくにラストシーンで演奏されるチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲が名演。誰の演奏なのか、今まで聴き込んできたどの盤でもない。とにかく名演。
 ヴァイオリニスト演じた主演女優のメラニー・ロランの演奏演技は、弓に松脂がついていないことを除けば、まるで本物のヴァイオリニストのようだった。演奏中の目配せまで、ヴァイオリニストだった。このあたりの演技指導は「のだめ」の比ではない(のだめの演奏演技も「竹中直人シュトレーゼマン以外は」頑張っていたと思う)。
ネット上で「Sarah Nemtanu」というヴァイオリニストらしいという噂を見つけた。演奏の演技指導も彼女らしい。サントラ盤は28曲も入っているので、チャイコンは映画で使われた一部分だけだろう。彼女の弾くチャイコン全楽章CDが欲しい。

 本作で用いられた通称「チャイコン」は、ヴァイオリニストが人生を賭しても悔いのない曲のひとつだと思う。
 音楽の力はそこにある。
 素晴らしい音楽に出会って、弾くにせよ聴くにせよ、それを我がものとして消化できれば、生きてきた意味を理解することさえあるだろう。作曲家は、本来、そういう曲を生み出すことを目指しているはずだ。私だってそうだ。以前も書いたけれど、ちょっといい曲とか、みんなに絶賛される曲なんかどうでもいい。1億人に褒められる曲よりも、たとえ一人であったとしても真の理解者を得られる曲が書きたいのだ。そのためには、私自身がもっともっと成長しなければならない。50年以上も時間をかけて何を知り、何を考え、何を悟ってきたというのだろうか。すでにチャイコフスキーの人生より長く生きてしまった。
 プロコフィエフが、あの素晴らしいピアノ協奏曲第2番を書き上げたのは22歳だった(しかし、まだ望みはある。バルトークが「ヴァイオリン協奏曲第2番」を書き上げたのは57歳だ)。
 演奏家が全身全霊を傾けて、曲(作曲者)と楽器と自分自身の「3つの音楽美」を表現したくなるような、いや「したくなる」などという曖昧な感情ではなく使命を感じるような曲を書かなくてはならない。そうでなければ聴衆に真の美しさは届かないことだろう。聴衆へ音楽を届けるのが演奏家の使命であり、作曲家は、演奏家が取り組む価値のある曲を生み出さなければならない。

 運勢の悪い日には悪いことが続くものだ。カミさんから「ヒックとドラゴン」というドリームワークスのアニメーションDVDを観るように言われていたのに、もう明日が返却日だ。これを観ておかないと、家族の話題に入れなくなる。そんなわけで、モリアキ翁の昼食が終わってから、雷も鳴っていないのに今日2本目の映画鑑賞に突入となった。(ちょうどその頃に福島沖M6.8、最大震度5弱地震があって、津波注意報が発令された)
 “たろ”から得た情報によると、ウェブ上ではラプンツェルよりも評価が高いということだった。
 実際、映画が始まってのめり込むまでには2〜3分しかかからなかった。あとはノンストップ。ドラゴンに乗って空を飛び回るシーンは秀逸。3次元的な表現で空を飛んだディズニーの「ピーターパン」が、ジブリの宮崎作品に影響を与え、宮崎作品がドリーム・ワークスに影響を与えたという構図もあり得るだろう。飛行シーンでは雪風(ゆきかぜ)シリーズを超えるスピード感の表現に成功しており、夕食後にカミさんと風と3人で、ドラゴンの飛行シーンだけを再視聴。カミさんは主人公のキャラクター設定がツボにハマっているようだった。私はストーリーが気に入った。
 
 というわけで実に運勢の悪い、しかも楽しい一日でした。おしまい。今から楽譜書きます。


【米国の原発専門家が緊急警告(上)】福島原発周辺40キロの住民は避難すべきだ