9月3日(土)リハーサル

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 台風12号の影響で関東地方でも強い雨を観測している地域があるけれど、作曲工房周辺は、風が少し強いくらい。午前中にはモリアキ翁を蕨駅前の行きつけの理容室まで送り届ける。

 午後は、浦和パルコの10Fにある「コムナーレ」内の音楽スタジオで「野村茎一の世界」のリハーサル。第5音楽室にあるピアノはS6だった。ヤマハが総力を結集して作った小振りなセミコンで、500万円以上する機種。もうずっと前、80年代だったと思うけれどS400Bの発表会に行って、その明るい音に驚いたものだが、その後継機がS4 で、S4を大型化した機種がS6ということでよいのだろうか。
 しかし、どんなピアノも保守と整音・整調次第。第5音楽室の湿度は70パーセントを超えていた。空調の設定温度は27度だったが、湿度高すぎ。ピアノが傷みそうで心配だ。

 最初は「ヴェルレーヌの詩による6つの小品」。生で全曲聴くのは久しぶり。
 坂本景子さんも田中順子さんも、それぞれ違う相方と連弾していたので勝手が違ったかも知れない。
 第1曲は「恋人のくに」。この曲の原曲は、19歳の時に書いた「ピアノのための古風なアリア第2番」。未発表だったので、そのまま4手のために書き直した。バルトークに夢中な頃だったからか、強拍が16分音符2つで始まるところがあり、その表現が難しいけれど魅力的な1曲。第1曲にふさわしい牽引力があると思う。初演時には人気が高かったと思う。
 第2曲は「恍惚」。初版ではLentissimoだったけれど、ピアニストの三浦京子さんがLentoと主張したので改訂版では、そのようにした。ずっと下降していく半音階に和声と旋律を与えた曲。この曲なら一日中繰り返し聴いている自信がある。当然のことながら12の音が全て登場する。超いい曲だ。もう2度と書けない気がする。
 第3曲は「パントマイム」。ずっとヘミオラが続くノリの良い舞曲。クセになるとずっと歌い続けてしまう。グルグル注意報。
 第4曲は「秋の唄」。前半はセンティメンタルでポップなメロディーが流れる。最初は伴奏と単旋律だが、対位法的に多声化していき、後半は新たな主題によって例外のない厳格カノンとなる。アナリーゼすると、最も“堅い”曲だけれど、聴く限りでは一番 “柔らかい” のではないだろうか。
 第5曲は「カテドラルよりも」。全音階主義(Diatonik)による白鍵だけの曲。そういう意味では第2曲「恍惚」と対照をなす曲。時間の関係で全曲演奏できなかったステージがあり、この曲が終曲となったことがあった。その時には圧倒的な支持を得た。確かに全6曲中、もっとも存在感のある曲だと思う(7オクターブに及ぶグリッサンドなど、仕掛けに事欠かない)。知らなければ白鍵だけの曲だとは思わないことだろう。
 第5曲からアタッカでなだれ込む第6曲は「木馬」。この組曲を委嘱してくださった三浦京子さんが一番に推してくださった曲でもある。「パントマイム」と並ぶリズミカルな曲。こっそり古典ソナタ形式で書いた。コーダがクライマックスになるように書いたので、最後を締めくくるのによいと思っている。
 
 この後、ピアノトリオ、フルートソナタバスーンソナタ、そして最後に「2つのムード」と長丁場の午後だったのだが、眠くなってきたので今日はここまで。(続きは「野村茎一の世界」公式ページに書くかも)

 今日は、作曲家で良かったと思えた至福の時を過ごさせていただいた。演奏してくださった皆さん、本当にありがとうございました。