12月28日(水)

232612

 今年のレッスンは今日で終わり。
 2011年も間もなく終わるが、戦後世代には、今年はベルリンの壁が崩壊した1989年に匹敵する年として記憶されるだろう。
 東日本大震災は日本人にとっては歴史上の大事件だが、福島原発事故は世界のエネルギー体制を変えてしまう出来事だった。
 「起こる可能性のある事故は必ず起こる」というマーフィーの法則は、その「可能性」が事実であるならば科学的に正しい。
 会議が世界を変えるのではなく、人々の意識を変えてしまうような出来事だけがそれを可能にする。音楽史で言うならドビュッシーの出現がその一例だ。
 世界中で原発の老朽化が進んでおり、再び核事故が起こる可能性は福島事故前と変わっていないか、むしろ高まっていると言えるだろう。ベルリンの壁が崩壊して分かったことは、壁はいずれ崩壊せざるを得ないものだったということだった。ソビエト崩壊も同様で、世界中の全ての国が共産化するという「ドミノ理論」も現実とは異なっていた(ドミノ理論と「調性から無調へ」は良く似ている)。
 世界のエネルギー事情も、原子力から再生可能エネルギーへの流れは止めることができないだろう。世界の伝統食が、その土地ごとの恵みに由来するように、エネルギーもそうあるべきだ。世界中が限られた産油国に依存しなければならないという偏りを放置しておく理由はない。化石燃料はいずれ枯渇するのだ(石炭はまだ数百年分ある、と主張する人は自分の寿命と比べているに過ぎない。石炭が形成された年月と比較しなければ意味がない)。
 風力エネルギーが豊富な国ではそれを利用すればよいし、地熱が使える国はそれを有効活用すればよい。石油を作る藻類の研究も進んでいるし、太陽光発電の効率もまだ上がるだろう。実際はベストミックスを探ることになるのだろうが、今後、石油を作る藻類のように、少し前までは誰も想像しなかったような未知のエネルギー源だって開発されるかも知れない。
 というわけで、2012年は「誰もが望んでいるのに未だ誰も到達できていない音楽」への道筋をつけたいものだ。
 ジャンルの垣根を超えて多くの人々が口ずさめるような音楽。音楽に詳しくない人にも専門家にも喜びをもたらすような音楽。いまのところバッハだけがそれを実現しているように思える。