3月29日(木)

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 「テレビがつまらなくなった」という声があるけれど、それはその人が「今まで観てきたジャンル」についての感想かも知れない。たとえばEテレNHK教育テレビと呼ばれていた頃に比べて格段にすぐれたチャンネルとなった。
 勝手な想像に過ぎないが、番組制作者たちを枠にはめていた頭の固い上位のプロデューサーが退職したというところではないだろうか。私自身のEテレ録画率は高い。
 放送大学も素晴らしい講義が多い。学生時代に、これだけレベルの高い講義を毎日受けていたら少し違う人生になっていたのではないかと思うほどだ。宇宙論のようにこの10年間ですっかり概念が変わってしまった分野でさえ、みごとに整理された理解しやすい講義なので、新たなパラダイムに遅れずについていくことができる。
 Eテレに「100分で名著」という番組があり、それをラジオで批判している人がいたことに驚いた。ダイジェストで読んだ気になるな、というような批判だったと思う。おそらく一度も番組を観ずに発言しているか、思い込みの強い人なのだろう。私はこの番組で初めて読み解くことができた書物がいくつもあり、読書の難しさと奥深さを改めて知る機会を得たのだった。
 ニーチェの「ツァラトゥストラ」を私一人でここ(番組レベル)まで読み解くことができただろうか、あるいは徒然草をすっかり読み間違えていたことに気づくことができただろうか。ブッダの「真理の言葉」など、その存在すら知らなかった。
 次回からは番組がリニューアルして、その初回が「源氏物語」だ。いくつもの現代語訳を読破しているが、知っているつもりになった瞬間、そのことに関して無知になるので、初めて読むつもりで番組を観たいと思っている。
 音楽を聴く時にも水先案内人が必要であるように、書物も同じなのだ。
 体験しなければ分からないことではあるのだが、モーツァルトでさえ、ひとりで気ままに聴いているだけでは聴こえてこないもののほうが多いだろう。
 テレビを例に書いたが、テレビ番組について書きたかったのではない。人が「優れる」としたら、それは優れたものへ接近できる力が増したということだ。好みは人それぞれで良い。真に優れたものは「個人の好み」くらいでは揺るがない。

 
>パラボラアンテナファンなので、こういう動画が大好き。野辺山の45m(これはサブミリ波電波望遠鏡)も臼田の60mパラボラアンテナ(これは探査機と情報の送受信をする純粋なアンテナ)も、鹿島の34mも実物を拝みに行った。見るだけで壮大な気分になれる臼田の60mは、アクセスがよいとは言えないものの行く価値があると思う。

JAXA|臼田宇宙空間観測所パラボラアンテナ方向転換