アンドレア・ピニンファリーナ氏死去

 ピニンファリーナ社の第3代目CEOのアンドレア・ピニンファリーナ氏が8月7日に交通事故のために亡くなった。ほぼ同世代であることもあって、心から冥福をお祈りしたい。
 フェラーリのデザインで知られているが、実は非常に広いカテゴリーの工業デザインを手がける企業である。優れた実績を上げ続けて高級ブランドを維持することはたやすくない。
 ピエール・カルダンという名前は、ある年齢以上の人々にとっては知っていることが常識のように思われることだろう。しかし、20歳以下の若者たちに質問すると、その多くから知らないという答えが返ってくる。彼のデザインが一時のブームだったのか、それとももともと富裕層をターゲットとしたブランドが一時期メディアに注目されたのかは定かではないが、ブランドの維持というものの難しさを思わせる。
 芸術家も同様である。創作者は誰もが自分の生み出した作品の永遠の価値を信じたいものだ。しかし、それは本当に難しい。ラスコー洞窟の壁画は数千年の時を経て、いまだに美しいが、ひょっとしたら今だからこそ美しいのかも知れないのである。


14時

 午前中に昨日の編集会議で指摘のあった「スケールを含むやさしい練習曲」の不足を補うために2曲のエチュードを書き起こす。女神が降臨している時は何でもない。
 時間的にはほんの3時間ほどだが、集中していると眩暈を起こすほど消耗するので、昼には休憩がてら「カラヤン/クルーゾー指揮の芸術」のシューマン交響曲第4番」リハーサル部分を再視聴する。カラヤンの分析力と指示の的確さ、その結果としてのオケの劇的な変化に心奪われ再び集中の世界に。1時間後には休憩どころか、泥沼から這い上がったような疲労感。休む時にはマジメに休まなければいけない。
 カラヤンが持つ確固たるイメージが現実の音となる過程は非常に学ぶところが多い。シューマンは強い個性を主張する主題や旋律線を書かない(書けない?)ので、私には“とっかかり”が掴めない。しかし、カラヤンは小さな流れをきちんと捉えて、それを曲の輪郭を浮き立たせていく。オケの扱いのうまさは格別。楽団員は彼に絶大な信頼を寄せていたことだろう(録画されているという特別な状況を加味しても)。