9月27日

3226

 今日は珍しくレッスンのない日。午後には戸田市の小中学校に通う門下の子どもたちが出演するステージもあるのだけれど、作業の一日とすることにした。
 ソナチネ第9番をダウンロードマーケットにアップロードすべく、決定稿作成にかかる。第1楽章に煮詰まると第2楽章を始める。小池宏史さんの演奏を聴きながらアーティキュレーションデュナーミクを書き加えて行くのだが、聴き入ってしまってすぐに作業が中断する。そのうち、なんとなく泣けてきて、一体何をやっていたんだっけと本気で思い出そうとする始末。結局何度も繰り返し聴いてしまった。
 すると突然、かなり前に見た夢を思い出した。ところが、その夢は見たばかりの朝にどうしても思い出せなかった夢なのではないかと思えるのだ。ガンにかかったことはないが、末期ガンの痛みにのたうち回る夢。知らない痛みなのに知っているという不思議。多分あの痛みはガン特有の痛みに間違いないのだろうと思う。根拠はないが、そう思えて仕方がない。以前、肋間神経痛になったことがあるが、あれは他の痛みとは異なる。腰痛になった時にも、初めて知ったタイプの痛みだった。どちらも経験しないと分からない痛みだ。とりあえず「早く仕事を終わらせないとこうなるわよ」という女神さまからのお達しと思うことにする。
 作業の合間に「路傍の猫」と「色々な色」のページをめくる。ラピスラズリを見て「あ、ザオ・ウーキーの青だ」と思う。夜に“たろ”とカミさんと3人、絵の話で盛り上がったのだが、たろは「青は難しい」と言った。いい青はないと言い切る。彼女はラインハルト・サビエ(1956- ノルウェー)の画集に付箋を貼った。「スクレブレニカから来たマドンナ I」と「病室」だった。あっという間にテーブル上に10数冊の画集が積み上がる。カミさんが「やっと集めてきた画集が役に立つわね」と言った。展覧会の図録だって100冊も集まればそこそこの金額になる。「でもね、図録は安いわよ。リチャード・エステスの画集は21000円もするわよ」。カミさんの言うとおりだ。たろが欲しがる画家の画集は、どれも高い。宮廻正明(みやさこ・まさあき)さんの画集「水花火」も検索すると13650円。実物は素晴らしかった。「水花火」は今井美術館蔵だが、今井美術館は島根県である。行けば画集よりも高くつく。「ハンマースホイの図録買ってきてよ」。たろが事もなげに言う。「今月・来月は、我が家は耐乏生活だから11月まで待て」。それだって怪しい。