10月12日(日)

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 午前中は“きくえ”ちゃん。大学に合格し、ホッとしたのも束の間、大学から出された大量の読諸課題と高校の定期テストに追われている。
 午後は横浜の“あき”さん。古典ソナタ形式を読み解くためのレッスン。ソナチネアルバム第1巻から第1番、第2番、第10番の全楽章、その他いくつかのソナチネから抜粋した楽章をを概観する。

 夜、NHKスペシャル 病の起源 第4集「読字障害〜文字が生んだ病〜」を視聴。これは大変重要な番組であると確信した。番組を見逃した人は、「読字障害」あるいは「ディスレクシア」というキーワードで検索して詳しく知って欲しいが、簡単に記すと次のようになる(番組を観た後では、ウィキペディアでの記述は分かりにくい上に内容に不足を感じたので、他のサイトとも合わせてお読みいただきたい)。

 文字は、黙読するにせよ、脳内で音声化されないと意味が把握されない。非常に能力が高いにもかかわらず、文字の読み書きだけが苦手なために能力が評価されないような障害を指す。日本語のように表意文字圏では20人にひとり、ロマンス系文字圏では10人にひとりいると言われている。読字障害の人は、たとえば空間図形の把握能力などが障害のない人に比べて非常に高い例が報告されているので、脳の使われ方が異なる可能性が高い。実際、読字障害と考えられている人には、モーツァルトベートーヴェンジョージ・ワシントンジョン・F・ケネディ、グレアム・ベル、ニコラ・テスラトーマス・エジソンフォン・ブラウンレオナルド・ダ・ヴィンチパブロ・ピカソオーギュスト・ロダンアントニオ・ガウディミース・ファン・デル・ローエニールス・ボーア、マイケル・ファラデー、アンリ・ポアンカレ・・・・らがいる。(ウィキペディアより抜粋)

 現在の日本の学校教育では、学力考査の多くが文字による質問と解答によって行なわれている。そのために、高い能力を持った天才が正当な教育と評価を受けられずにいる可能性が高い。実際、日本の子どもたちが海外で読字障害を発見されることもあるということだった。今日、番組を視聴した教育現場関係者の中には思い当たる生徒がいるのではないだろうか。この放送が障害を持つ子どもたちに福音となることを祈りたい。

 さて、娘の“たろ”が昨日の「大琳派展」に続いて「ハンマースホイ展」(国立西洋美術館)に行ってきたので、またまたいろいろと話が聞けた。
 昨日、彼女が大琳派展について語ったことで一番面白かったのは「光琳てさ、センスいいんだよ」という言葉がカミさんのツボにハマって笑いが止まらなくなったことである。美術史に疎い“たろ”は、画家たちの美術界における評価をよく知らない。彼女が語るのは、自分が作品から受けた美術的印象だけなのだ。それが、よく当たるので確かに可笑しい。
酒井抱一はうまいよ」
 またまたカミさんが笑った。

 ハンマースホイは、日本では無名に近い画家である。
「奥さんが不幸だね」
「どうして?」
「これみてよ。奥さんが38歳の時の絵だよ。これじゃ50歳だよ。顔色はシュレックみたいに緑だし」
 絵について聞くと「空間と光を描く、独特の個性を持った力のある画家」だと答えた。それから図録を指さして「変なところもある」と言った。なるほど、スクエア・ピアノの4本あるべき脚が2本しかなかったり(他の絵では4本ある)、テーブルの脚の影(シェイドではなくてシャドウのほう)が異なる方向に伸びていたり、ドアノブが一切省かれていたりした。窓から床に漏れる陽光がカーテンの形と一致しない絵もあった。どれも、言われなければ全く気づかなかった。見えるとは、こういうことかという感じ。
「(見る人を)試したのかもね」

 そして、図録の色合いが実物と大きくかけ離れていることを“心ゆくまで”ののしって、彼女の話は終わった。

 “たろ”によって新たにタッシェン版の「クリムト」(ゴットフリート・フリードゥル著)が書庫に加わった。クリムトに関する詳細な研究書で、彼女が両親の美術的な知識を超えるのはそう遠くないかも知れない。カミさんからは、吉田秋生の「海街diary2 真昼の月」を渡された。