10月26日 ヴィルヘルム・ハンマースホイ展

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 午前中、フェルメール展を見るためにカミさんと上野に出かけたのだが、上野駅構内にすでに「フェルメール展入場制限30分待ち」という案内があった。すぐにカミさんの提案で、彼女はまだ見ていない「大琳派展」に、私は「ハンマースホイ展」と別行動をとることになった。
 図録の色合いは実物とは全く異なると聞いていたが、確かに実物は印刷では再現が難しいと直感した。「リネゴーオンの大ホール」と題された無人の何もない室内の絵は、ここにピアノを持ち込んで演奏するならどのような曲がよいか、などという想像をかき立てられるような雰囲気だった。
 最後から2番目の展示室にハンマースホイと同時代同世代、そして友人でもあった画家ピーダ・イルステズとカール・ホルスーウの作品も展示されていた。この二人の作品は、ハンマースホイよりも魅力的に見えたのだが、最後の展示室で再びハンマースホイの作品に接した時、全てが氷解した。音楽も同じだが、私たちは芸術作品に単なる気持ちよさだけを求めているのではないということだ。イステルズやホルスーウがデンマーク国内の国民的画家としてとどまって国境を超えることがないのは、そこに理由があるに違いない。