10月29日(水)「世界征服は可能か?」

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 岡田斗司夫著「世界征服は可能か?」(ちくまプリマー新書061)を読んだ。
 扱っている題材が「仮面ライダー」であったり「北斗の拳」「ガンダム」であったりするので勘違いしやすいが、これは極めて真面目な書物である。経済学、社会学政治学、哲学、歴史学を網羅した大変な本だ。岡田斗司夫さん自身も大学に講座を持っておられるから書くのは妙だが「こんな優れた啓蒙書を書ける大学の先生がいるだろうか?」と思うほどだ。
 初めて本当の世界の姿が見えたような気になった。世界が育てなければならないのは学力が高いだけの子どもではなく、真実の輪郭を読み取れる子どもだ。岡田斗司夫さんはどのような子ども時代を過ごしたのだろうか。塾通いではとても彼のような知性は育たないだろう。本書で、初めてローマ帝国ローマ帝国であった理由も分かった。カルタゴ対ローマのあたりの歴史がたまらなく好きで、ローマ帝国関連の書物はそれなりに読んできたつもりだったが、ローマ帝国の核心を突かれたと思ったのは初めてかも知れない。
 サブカルチャーに距離を置いている人は、馴染めない部分も多いだろうから誰にでもお薦めできる書籍というわけではないが、大学者が一生を献じて書き上げた退屈な研究書を蹴散らすものであることは間違いない。