10月30日(木)「明日の神話」

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 吉村絵美留著「岡本太郎明日の神話”修復960日の記録」を読んだ。
 「修復家だけが知る絵画の真実」を読んで感銘を受けたので、今日、病院の待ち時間で読み切ってしまった。岡本太郎の絵であるかどうかは直接関係ないかも知れない。30mにおよぶ壁画修復の困難さと、それを実現してしまうスーパーチーム「吉村組」の凄さに打たれる書籍である。
 修復にあたって絵画に対する知識が必要なのは当然だが、修復家は、それ以上に科学者でありエンジニアでなければならない。
 30年以上前に描かれて行方不明になっていた岡本太郎の大壁画「明日の神話」がメキシコで発見された。それを日本に運んで修復することになった。ボロボロにひび割れたコンクリートに描かれた巨大な壁画をどのようにコンテナに入れて輸送するか。そもそもボロボロの壁画は輸送に耐えるのか。
 限られた予算、人手、時間の中で修復を行なう5人のチームの苦闘が淡々と冷静に語られる。詳細は読んでいただくしかないが、手術用実体顕微鏡による微細な作業から、最後には超純水と綿棒による洗浄まで登場する。
 吉村さんの洞察力、技術力、統率力、プロジェクト・マネージメント力には敬服するばかり。