11月3日(月)

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 カミさんと娘が芸大美術館に出かけたので、長男と2人でもろもろの家事を済ませて休日の始まり。
 ウラノメトリアの作業と並行して、休憩時には詩人の川崎洋さんの「教科書の詩をよみかえす」を読み、音楽コラムを書いて、ようやく訪れたインスピレーションを捕まえてフラッシュの第15回演奏会のプログラムノートを書いた。
 「教科書の詩をよみかえす」は、まだ読了していないが見事。著者の川崎洋さんが国語を教えていたら、生徒みんなが詩を大好きになって、詩人を志してしまうかも知れない。見事だと書いた最大の理由は、掲載された詩に負けない解説がそれぞれついているからだ。

 たとえば最初の詩は石垣りんさんの「峠」。名作である。
 この詩につけられた川崎さんの解説冒頭を引用する。

 東京、銀座のデパートで、古生代末期の二畳紀後半に住んでいたベレロフォン・ジョーンジアヌスという貝の化石が発見された記事を読み、びっくりしたことを思い出します。そのデパートの床材の大理石に埋め込まれていたもので、岐阜県大垣市の金生山から切り出された、とありました。途方もなく長い時間の流れの中で、海底はいつか地上にせりだして山肌になったということです。そんな峠もあるでしょう。
 その峠は太古のむかし、初めて通りかかった、まだサルの面影を残した原人の子どもが、木々の間からはるか下の沼で水を浴びているナウマン象の群れを見て、総毛立った場所かも知れません。
 あるいは、山の幸、海の幸の恵みが少なくなり、増えた仲間の命を支えきれず、住み慣れたムラを捨て、新しい土地を求めて旅に出た、縄文の民たちが越えて行った場所かも知れません。以下略〜。
 
 解説を読むと、どの詩もみんな素敵に思えてくるから不思議だ。ウラノメトリア第2巻α版のレッスン・ノートにこのくらい見事な文章が書けたら、人気がアップするだろうにと思った。