5月13日(水)

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 今日、夜の最後のレッスンがキャンセルとなったので(というわけではないが)、HDレコーダーの録画記録をチェックして、リュック・ベッソンの「レオン」を観てしまった(すでに数回観ているにもかかわらず)。
 映画監督がどういう仕事であるか、ということをリュック・ベッソンは示そうとしているように思える。
 小説家とマンガ家が実は全く異なる仕事であるように、実写映像作家はアニメーション作家と大きく異なる仕事である。CGを多用した映画は、どれだけ実写と区別がつかないような映像であったとしてもアニメーション作家の仕事に近い。どのジャンルのレベルが高いとか低いということはない。ましてや小説家、マンガ家、実写映画作家、アニメーションやCG作家にジャンルによる序列があるわけではない(昔はあったかも知れない)。今では全ては作者個人のレベルの問題だけである。
 にもかかわらず、小説を読んで想像力を働かせるべきだというような発言が少なからずあったりして、驚いたりうんざりしたりする。想像力とはどれだけイメージを具体化できるかという力である。普通の読者は、その力が実はそれほど高くないのではないかと思う。力のある小説家は、そういう読者の脳内にも見事なイメージを現出させることができる。優れた映像作家は、凡人には想像も及ばぬ世界を提示する。マンガ家はマンガでしか表現できない人の機微を描きだし、アニメーション作家は、あり得ぬ世界を現実と錯覚させる力を持つ。
 簡単な喩えをするならば、モネの絵を文字だけで説明することが意味がないというようなことである。ただし、優れた小説家ならば、モネの絵を見た時の気持ちだけを題材に素晴らしい物語を構築してしまうかもしれない。しかし、それはモネの絵が素晴らしいのではなく、その小説が素晴らしいことになる。
 師の言葉。依頼者の想像の及ばぬところで仕事をしなければならない。
 リュック・ベッソンは、それをしている。