12月27日(日)

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 ウラノメトリア装丁担当のうしおさんがインフルエンザでダウン、打ち合わせは年明けに。
 今日は年末恒例の大掃除第1弾。レッスン室ではクッションのカバーを洗濯したり、不要なものを分別。冷蔵庫内も不要コンテンツをリストラしてすっきり。あとは楽譜書き。超絶技巧ピアニカアレンジは、鳴りきっていない音や鳴らそうとしたに違いない音を推測して聴き取っていくので焦ってもうまくいかない。だから時間をかけてじっくりと。この仕事が終わる頃には私自身も少しは変われることだろう。来年は傑作が生まれるかも。
 今日は、いくつか気になるニュースがあった。そのなかのひとつが、中国の高速鉄道が350km/hで営業運転を開始したこと。ICE3(ドイツの第3世代高速鉄道用車両)をベースにした車両らしいが、当のドイツでは330キロ運転しか実現していない。高速鉄道というのは宇宙開発にも等しい高度な技術であって、速度が少し上がるだけでリスクはぐんと上昇する。単なる推測だが、中国側は世界一を誇示するために350キロ営業運転を決めたのではないか。速く走るだけならフランスの高速鉄道TGVが無改造で574.8km/hを記録しており、これは日本のマグレブ(磁気浮上リニアモーターカー)の581km/hに匹敵する。そのニュースを聞いた当時の日本の国会議員が「それならリニア新幹線はいらないじゃないか」と言ったという逸話が伝えられているが、現実はそんなに単純ではない。そのレベルの速度では鉄輪方式では実験以外、実用化は不可能に近いだろう。速度記録達成時、TGVは火花を散らしながら走っていたということだから、その速度を長時間維持することが厳しいことが窺える。
 ひとつの例を挙げると、高速鉄道は距離を重ねるうちに鉄輪が徐々に楕円形に摩耗する現象が起こることがある。日本の新幹線は定期検査の時に機械研摩に加えて職人芸で手磨きして真円性を保っているが、こういう技術の積み重ねは数年では生まれない。ドイツのICEでは、鉄輪の周囲をゴムのような弾性体で覆って偏摩耗を防ぎ、乗り心地の向上も図ったが、それが仇となって1998年にエシェデ事故という鉄道史上有名な大事故が起こった。高速鉄道事故が航空機事故なみの危険を伴うことが世界に知れ渡った事故だった。
 日本の新幹線は本当に高度な技術と志によって安全が保たれている。それとて、少しでも気を抜けば安全など保証されない。中国も速度ではなく、安全こそが性能であることを認識してくれていることを願うばかりだ。