8月7日(土)戸田橋花火大会

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 迂闊にも、再びドライアイ角膜損傷をやってしまったらしい。左目がゴロゴロする。2階から目薬は取りあえず中止して、真面目に点眼。
 午前中は年長さんのヒロ君のお試しではない第1回目のレッスン。
 最初にやってもらったのは「お陽さま」を描くこと。お約束どおりのヒマワリ型太陽。本当のお陽さまに“タテガミ”がないことは本人も自覚している様子。では、なぜ描いてしまうのか。それは伝わりやすくするためにほかならない。ところが、それは他者のためではない。自分が楽に伝えるためと言ってよいだろう。
 ピアノ演奏に年齢は関係ない。作曲工房は「子ども弾き」厳禁。今日はタテガミなしの“ミ”が弾けるようにトレーニングした。帰りがけ、彼はお母さんに「また来たい」と話していた。そうだ、ぜひ来てくれたまえ。

 午後は坂本景子先生の完成したての防音室の音場確認に。到着すると、すでに中山さんが作業を始めていた。以前のレッスン室は少々狭かったけれど、今度の部屋は余裕がある。
 天井材は作曲工房と同じ柔らかい素材の吸音天井。壁は防音・遮音・吸音材の3層構造に壁紙、床はカーペット、窓にはカーテン。ほんの少し高音がキンキン響く程度で、これなら簡単な修正で思いどおりの響きに持っていくことができるだろう。さすが坂本先生というべきか。作曲工房のレッスン室の響きをよく聴いていたに違いない。AsやEなどいくつかの音が部屋にわずかに共鳴するので、その特定の音の整音を中山さんにお願いした。彼のような名人の手にかかれば、ピアノの全ての音が均一な響きとなることだろう。それにしても良いピアノだ。中高音の音色を聴いて、自分のピアノの音も少しいじりたくなった。久しぶりにハンマーフェルトをマッサージすることにしよう。

 戸田橋の花火大会の日は2005年以来、楽譜の作業が進むことになっている。だからこの6年、花火を見にいっていない。今日も例外ではない。グラフィックな修正個所はおそらくまだ優に1000カ所を超えるだろうが、音の修正・変更はもうないだろうと思っていた。しかし、ドンドンと花火の音が防音室内部にまで響く今日は、音そのものの変更があった。
 和音の配置は、とても微妙なものだ。たとえば英雄ポロネーズの冒頭をショパンはユニゾンとした。ベートーヴェンブラームスだったら和音としたかも知れない。ショパンの判断は先入観のない見事なものだ。駄目な作曲家は“手癖”で和音を掴んでしまう。モーツァルトでさえそういう時がある。左手に、休符こそはさむものの平行5度が登場する時などがそうだ。念のために書いておくと、和声の禁則だからいけないと言っているのではない。そこにモーツァルトの手癖を見ることができるということだ(K.333第1楽章など)。
 先入観なく自らの作品を見直すことはとても難しいけれど、和声配置が最善とは言い難いものを発見して、より豊かな響きに置き換えることができた。

 どういうわけか、休憩がてらテレビのスイッチを入れたら「ハゲタカ」の映画版だった。数年前、テレビドラマ版を観ていたので、思わずそのまま座り込んでしまった。原作は真山仁、脚本は林宏司
 なんと見事なストーリーなのだろう。世の中には頭の切れる人がいるものだ。昨日のサマーウォーズはハゲタカに比べればお子様ランチ(ただし、とてもおいしいお子様ランチだ)に過ぎないことが分かる。(集客力で言えばサマーウォーズが圧倒することは間違いない。興行的にはワーナー・ブラザーズに軍配)
 もしオケの曲を書くならば、これら両作品を超えるスコア(総譜)を書かなければと思った次第。