8月28日(土)大導寺兄弟によるオータムコンサート

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 午前中は、小さなヒロ君のレッスン。保育園だから夏休みはないそうだ。
 よその国の名前を何か知ってる? と、たずねたらひとつも知らないというので、例としてアメリカを挙げたら「アフリカなら知ってる」ということだった。これからヒロ君とは世界地図か国旗の本でも一緒に眺めることにしよう。
 手首の動きを見ていれば重力奏法による打鍵がどの程度正確にできてきたかが分かるけれど、ヒロ君はなかなかサマになってきてカッコいい。次の課題はレガートだ。
 レッスンを終えると、おちゃめさんからメールで「栗城史多(くりき・のぶかず)」という人のテレビ番組情報が。早速録画予約する。
 昼食をとって、12時46分の電車でJTホール“アフィニス”に向かう。昼だから接続の悪さを覚悟していたが、1時33分に溜池山王駅に到着。47分なら充分速い。JTビルは夜しか行ったことがないので、あらためてその高さ(169.7m)を見上げてしまった。
 この建物自体が周到に用意された集金システムの成果と言えるだろう。もし、格差社会を是正するとしたら、集金システムの“数の論理”に踏み込んではどうだろうか。それは次のようなことだ。なんらかの音楽が大ヒットして、仮に100万ダウンロードを超えたら、その先の利益には高率の所得税をかけるというようなものだ。中国の歌手は1曲ヒットすると、13億人のパワーに支えられて膨大な印税収入があると言う。これなどまさに数の論理だ。格差の正体は案外こんなところにあるのではないかと思う。個人の才能や努力分には報いることとして1曲で1億円も儲けたらよいではないか。本当に才能のがあるのなら、2曲目のヒットで更に儲ければよい。しかし、一定の利益を超えたら、そこから先は税金として社会に役立てるという案はどうだろうか。これなら数の論理が個人や一企業の儲けだけではなく人々に還元されることになると思うのだが。

 さて、肝心の「大導寺錬太郎&俊平 オータムコンサート2」は、いつもと違って半分ほどの入り。今までに行った大導寺さんのコンサートでは最も空席率が高かったように思う。問題はこの暑さだろうか。
 ちょうどホール中央に席をとった。最初はモーツァルトの「アンダンテと5つの変奏曲 K.501(連弾)」。今まで、大導寺さんのモーツァルトはNG続きだったけれど、今回はとてもよく練られた演奏で素晴らしかった。対位法的な構成がよく生かされた連弾だったと思う。
 続いて兄の錬太郎さんのソロでドビュッシーの「ベルガマスク組曲」。プレリュード冒頭部の4番目のCが鳴りきらずにデッドノートとなってしまいヒヤッとしたものの、徐々に調子を上げていった。第2曲「メヌエット」はテンポ設定がとても速く、ついていくのが大変だったが、これは第3曲「月の光」とのコントラストを考えてのことかも知れない。確かに月の光が際立つ効果があった。第4曲の「パスピエ」も速いテンポ設定。力強くもサラリとしたベルガマスクだった。
 次は俊平さんのシューマン「幻想小曲集」。今回の収穫は俊平さんがとても成長していたことだろう。一部、暗譜が怪しくなってしまって曲が途切れたところもあったものの、それが気にならないほどシューマンらしい演奏だった。

 少々急ぐ。休憩をはさんで第2部はシューマンラフマニノフの連弾曲。連弾曲の選曲がよい。アンコールで演奏されたサン=サーンスの「水族館」と「化石」をも含めて、4手のピアノ曲はこうあるべきというような優れたスコアばかりが演奏された。
 俊平さんは同じくシューマンの「子どもの情景」から7曲、錬太郎さんはブラームスの「ピアノソナタ第2番ヘ短調」。このピアノソナタを聴くのは初めてだった。
 今日のイチ押しは幻想的な雰囲気を醸し出していた「水族館」だろうか。ウナコルダと絶妙なピアニッシモが生み出す、不思議世界だった。

 夜、レッスンを終えてから、若き登山家の栗城史多さんがアンナプルナに挑むドキュメンタリー「頂きの彼方へ」を視聴。登山ものには弱いので、たちまち引き込まれて見入ってしまった。山も音楽も人を育てる。