12月28日(火)

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 今日はパウルヒンデミットの忌日。彼は晦渋な作品ばかりにスポットライトが当てられてしまっているので(それは、かつてのピカソバルトークと同じ)、今朝の定期便にリンクした「6つの歌」のような名作が埋もれてしまっている。
 そもそも大作曲家たちの作品でさえ、本当に優れた曲が紹介されているのかというと実は怪しいのではないか。
 才能とは「何を好むか」であると以前書いたと思うが、それはもちろん「優れたものを好む」ということだ。「英雄は英雄を知る」という格言は全く同じ意味と捉えて良い。
 演奏も同じ。今日はラヴェルの忌日でもあるので、マルセル・メイエが1954年に録音した「ソナチネ第2楽章」をリンクした。私は名演奏であると思っているが、判断は皆さんそれぞれにお任せしたい。

 今日、父のために注文した「筆談器」が届いた。パイロットのジッキー スーパーライトBR。白濁した液体に磁性体を沈めた小さなセルを集めた構造で、「せんせい」という子ども向けのお絵書きボードの大人版のようなもの。BRはBlack & Redの略で赤と黒の2色が表現できる。
 補聴器でも何とか意思の疎通は可能だが、重要な言葉をこのボードに書きながら会話すれば間違いが減ることだろう。
 良好な人間関係を保つには、他愛ない会話、たとえば「今日は寒いね」のような言葉も必要なのだ。それを聞き返されて何度も説明するのは意味がない。ボードに「寒い」と書いて「今日は寒いね」と言えば、ツーカーの間柄である家族や友人なら簡単に伝わることだろう。
 難聴は視覚障害よりも孤独に陥りがちだ。人の気配が分かりにくくなるというだけで孤独を感じやすくなることだろう。にもかかわらず、聴こえづらいと当の本人が会話が億劫になる。だから周囲からの働きかけが重要だ。今日は早速、筆談器の効果を確かめることができた。ケースによっては筆談器が2セットあったほうが便利かもしれないが、父は筆談器に書いた文字に対して言葉で返答してくれるので1セットで事足りた。