3月22日(火)核汚染の世界的拡大

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 最初にIRSN(フランス放射線防護原子力安全研究所)が作成した福島原発事故によって生じた放射性物質がどのように拡散するかというシミュレーション動画をご覧いただきたい(ウィンドウが開いたら地図左下の再生ボタンをクリック)。

 Accident de Fukushima_IRSN du 12/03/2011

 大気は世界が共有していることをあらためて思い出させる動画だが、日本政府には多国へ及ぶ汚染には気づいていないかも知れない。
 次は「全国の雨の放射能濃度一覧」である。

 全国の雨の放射能濃度一覧(3月18-21日、順次更新)

 各県のグラフ左側の数字の単位は「メガベクレル毎平方キロメートル」。山形県山形市)の放射性ヨウ素のピークレベル58000、茨城県ひたちなか市)の93000-85000への推移、埼玉県(さいたま市)の7200-22000、東京都(新宿区)の5300-25000への上昇などが目立つ。千葉県(市原市)は最大で710、それ以外の多くの都市では0なので、この結果が原発事故によるものであることは明らかと言ってよいだろう。宮城と福島の数値がないが、モニタリングできないか、発表できないほど深刻なのかのどちらかだろう。
 これらの汚染は風向きの影響が最も大きそうだ。というわけで、風向・風速の詳細。

 福島第一原発周辺の風速・風向(Google Mapsタイリング版)

 これらデータは恐怖を煽るために存在するのではなく、これを知ることによって私たちが核汚染の脅威に立ち向かえるようになるためにある。
 放射性物質の飛来が多い日からしばらくは、乳児のミルクにはミネラルウォーターを使うなどの防衛策を取ればかなり安心だろう。放射性のあるヨウ素131の半減期は8日だが、水道水はどんどん更新されて8日も滞留することはなく、モニタリングされた日から数日たてば新しい汚染度に従うことになるだろう。
 というわけで、これらサイトをブックマークして活用していただければ幸いである。

 今日はアルテュールオネゲルの「私は作曲家である」を30年以上ぶりくらいで読み返す機会があった。日本語版の初版は1953年。訳者は吉田秀和さん。私が読んだのは、その改訂新訳で1970年初版のもの。「わが職業」叢書に収めるために、オネゲルに依頼があった一冊。著書というよりは、「わが職業」編集者であるベルナール・ガヴォティとの対話の記録である。
 オネゲルは「作曲は職業ではない」とまで言い切るほど、作曲がビジネスモデルになり得ないと考えていた。その証拠としてドビュッシーの「アラベスク第1番」の初版はわずか400冊しか出版されなかったのに売り切れるまでに12年もかかったことなどを挙げている。つまり、新しく作曲された音楽が人々に理解されて受け入れられる頃には作曲者はすでに亡き者になっている、ということだ。たしかにドビュッシーは貧乏だったらしい。
 オネゲルは冒頭近くで「作曲家の第一の資格は、もう死んだ者であることです」と言っている。
 そういえば、私も「その昔に死んだ作曲家」にされてしまったことがあった。作曲家は須(すべから)く絶滅していなければならないのだ。
 「どうして今はベートーヴェンニュートンみたいな人がいないの?」という問いは、子どもたちの誰もが持っている疑問のひとつだろう。

 この本を読むと、オネゲルほどの作曲家であっても作曲で稼いだことはないらしいことが分かる。
 我が家にウラノメトリアの在庫の山があることも何ら不思議はないということなのだ、などと妙に安心したりする。

 オネゲルが生きた時代の後半には放送や録音技術が発達して、現代と同じように街中に音楽があふれるようになった。彼は「朝から晩まで音楽を聴かされた人々が、夜、演奏会に行くだろうか」という疑問をも投げかけている。
 本書の目的は作曲を目指す若者たちに「作曲家になるのは止めなさい」と語ることであった。
 オネゲルの観察と分析は鋭く、たとえば12音技法については次のように述べている。

「現代について私が痛感することは、反応のひじょうな速さとなにかの手法の性急な濫用です。12の音の自由な配置を獲得するにはモンテヴェルディからシェーンベルクまで数世紀を要した。ところが、いちどそれが発見されると、それ以後の進化はいっぺんに急に速くなった。われわれはみんな壁の前にいる。-以下略」

 この後に自由を求めたセリー主義者が、自らの定めたルールによって縛られている矛盾について語っている。
 12音技法は水平方向についてのみ語られ、垂直方向への禁忌(たとえば不協和音の禁止)などがないことに触れ、オネゲルは反対の立場を明らかにしている。
 
 12音セリーであっても、垂直方向(響き)に対して自らの厳しい響きへの感覚を貫き通したフランク・マルタンの作品を聴けば、オネゲルも「条件付き賛成派」に回ったかも知れない。
 オネゲルは記譜法への疑問や混合拍子の濫用などについても疑問と警告を発していて、それらの多くは傾聴する価値があると思う。

 今日は地震が多かった。ひょっとすると東海・東南海・南海地震へ連動する可能性も捨て切れず、その時に私たちを救うのは体力と気力かも知れないから夜更かしなどせずに寝ることにしよう。